スカーレット・トマスの新作"Our Tragic Universe"

Our Tragic Universe

Our Tragic Universe

ポストモダンついでに、一昨年翻訳された『Y氏の終わり』(書評はココとか)が評判になったスカーレット・トマスの新刊の話題。
来月5月に発売される本のタイトルは"Our Tragic Universe"。

書きかけの小説はいつまでも完成しないし、ズルズルと長年つきあっている恋人にもうんざり。仕事にも私生活にも行き詰まりを感じていた主人公のメグ・カーペンターは、ある疑似科学本の書評を書く仕事に飛びついた。しかし『不死の科学(Science of Living Forever)』という題名のその本はそう簡単に手に負えるものではなかった。

宇宙論、物理学、タロットカード、禅の公案ニューエイジ思想、物語論ニーチェ、ボードリアール、さらには編み物パターンを頼りに奮闘するうち、メグには幾つもの疑問が湧き起こる。自分は妖精を信じているのか?魔法は?自分は超越存在なのか?自分は物語のない物語を生きているのか?

といった感じ。沼に放たれた謎の獣とか、瓶のなかの船とか、ブラーブには色々書いてありますが物語とどう絡んでくるのかはよくわかりません。とにかく『Y氏の終わり』で見せてくれたケレン味たっぷりの作風は健在のようで、今からとても楽しみです。

追記:
「編み物パターン」というと奇異な感じがするかも知れませんが、実はコンピュータの歴史と関係があるのです。フランスの発明家ジャカールが様々な模様を機械で織れるジャカード織機を発明したのが1801年。織物パターンを記録したカードを使うという方式は、パンチカードの元祖となり、コンピュータの開発に重要な役割を果たします。キーボードもディスプレイもなかった初期のコンピュータでは、パンチカードでデータとプログラムを入力するしかなかったのです。ウルトラマンバビル2世でも、出力はまだパンチカードでしたね。