Down and Out in Paris: シェイクスピア・アンド・カンパニー書店訪問記

世界一有名な書店、Shakespeare and Companyを訪れたジャネット・ウィンターソンの記事があったんで、ご紹介しておきます。

http://www.guardian.co.uk/books/2009/mar/07/shakespeare-and-company-bookshop-paris

写真を見てるだけで幸せになりますね。うちの店もこんな風にしたいなぁ。

私がジョージ・ホイットマンと初めて会ったのは2007年。店の前で娘のシルヴィアさんと話をしていると、オーウェルの"Down and Out in Paris and London"が降ってきて私の頭を直撃した。私ではなく、シルヴィアのほうを狙って3階から落とされたものだった。
「このあたりじゃもう少しまともな扱いをしてもらえないのかしら?」
見上げるとパジャマ姿のジョージが窓から身を乗り出して、次の本の狙いをつけているところだった。
ドストエフスキーだぞ! 白痴だぞ! ヘヘヘッ!」
シルヴィアは私の怪我の具合を調べながらこう言った。「中に入って父に会っていかない?」

こんな風に始まる記事なんですが、本好きにはたまらない独立書店の姿に溜め息が出ます。

実はシェイクスピア・アンド・カンパニーというのは二つあるんですね。1913年にシルヴィア・ビーチがオデオン通りで始めたのが歴史的に有名な方で、ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』を出版したこと、ヘミングウェイの『移動祝祭日』に登場することなどで知られています。1930年代の「パリのアメリカ人」達のサロンだったわけですが、ドイツによるパリ占領にともなって閉店を余儀なくされます。

オリジナルのシェイクスピア・アンド・カンパニーとはまったく関係なく、第二次大戦後にジョージ・ホイットマンがパリで本屋をはじめます。最初ははしけの上で始めたのですが、本が湿気てしかたないので(当たり前だ)、閉まっていた雑貨屋を買い取って始めたのが今のシェイクスピア・アンド・カンパニーの発端。最初の10年間は「Le Mistral」という名前で営業していたものの、ローレンス・ダレルの朗読会にシルヴィア・ビーチが顔を出したことから話がまとまり、店の名前をシェイクスピア・アンド・カンパニーと改名することになったということです。

オリジナルと同じくこちらも作家と縁が深く、時代を反映してアレン・ギンズバーグヘンリー・ミラーアナイス・ニンら、ビート・ゼネレーションの作家達がこの店に足跡を残しています。

ただ本を買うだけの場所じゃなく、じっくりと読んで、隣の人と語り合い、作家本人まで出入りするこういう空間があるというは実に幸せなことで羨ましい限りです。お茶も出れば食事も出ればベッドだって貸してくれる。何しろ店主のジョージがこの店にずっと住み続けて、一日一冊の読書ペースを欠かしたことがないというんだから。

ジョージ本人は2006年に92歳で引退して、今は娘のシルヴィアさん(25歳)が店を任されているそうです。この歳の差が、ジョージという人を如実に物語ってますね。いやー、元気です。