ケリー・リンクお薦めの2冊

A Shadow in Summer (The Long Price Quartet)

A Shadow in Summer (The Long Price Quartet)

ケリー・リンクのお薦めということで購入した2冊。

Elizabeth Knoxのヤングアダルト・ファンタジー"The Rainbow Opera"は、どうも私には合わないみたい。小説を読んでいて、こんなに膜というか曇りガラス越しに眺めているような気分は、味わったことがありません。英語で読んでるからとか、そういう次元じゃないんだなぁ。

15歳の女の子二人が、人生の岐路となる試験を目前にして、ドキドキしているというような情景がダラダラと続くと、30後半のオッサンは退屈してしまうというのは確かにあり。でもそれよりも、うーん、子供向けに書かれているというのが分かってしまうのが問題なのかなぁ。とりあえず、50ページで一旦中断。

一方、Daniel Abrahamの"A Shadow in Winter"の方はすこぶるよろしい。こういう3部作系のファンタジーなどメッタに読まないのだけれど、新人の作品ながらこれは読み応えがあります。なんと言ってもジョージ・R・R・マーティンの薫陶を受けた人で、クラリオン創作講座で指導を受けたことをきっかけに、ガードナー・ドゾアを含めて3人で競作までしたくらい。マーティンの「氷と炎の歌」みたく、キャラ設定や世界設定が実にしっかりとしていて、ファンタジーならではの魔法の処理も見事に処理されている。というか、こんな地味な魔法ってありかと思うくらい。今のところ出てきたのは、植物の成長を早める魔法と、綿花の実から種を取り出す魔法(笑)。いや、このシーンはほんとに素晴らしいんですけどね。

ものすごく大雑把に言うと、大航海時代を経て西欧諸国が中華帝国にたどりついてみれば、そこでは「気」に基づく独自の魔法文化が根付いていて、なかなか思うように貿易を有利に進めることが出来ないという状態。他の地域では武力を背景にブイブイいわせてるだけに、何とか謀略をめぐらして、圧倒的な繊維産業のイニシアチブを奪いたくて仕方がない……って、ほら、地味でしょ(笑)。ただ、この小説では、「気」にあたるのが、日本の言霊に近いAndatという存在で、「詩人」と呼ばれる特別な能力者が、一定の概念を擬人化する形で駆使するのです……といっても何のことかわからないですよね。私もまだわかってません。

とにかくこれは面白いので、最後まで読んでみます。