秘密結社アルカーヌム

『秘密結社アルカーヌム』 トマス・ウィーラー著 扶桑社ミステリー文庫

コナン・ドイルラヴクラフト、フーディニーら実在の人物が今世紀初めにオカルト秘密結社として活動していたというおとぎ話。聖書外伝である「エノクの書」と、ユダヤの失われた支族をめぐって、ニューヨークを舞台にオカルト合戦が繰り広げられる。アレイスター・クロウリーランドルフ・ハーストといった一癖も二癖もある連中まで登場して物語に彩を添えるとあっては、面白くないはずがない……のだけど、これが実につまらなかった。

だって、ハリウッド映画のノベライズみたいなんだもん。

著者が脚本家出身ということで納得はいくんだけど、物語の構成から人物の登場させ方から事件の展開まで、どこかの映画で見たような既視感の連続。実際、この作品の映画化が決まっていて、著者本人が脚本を書くんだとか。さらに言えば、キャラクターの設定がちゃちで、せっかく実在の人物を利用しているのに殆ど活かせていない。名前こそ「コナン・ドイル」や「H・P・ラヴクラフト」とついてるけど、中身はB級映画に出てくる二流役者にすぎないのだ。

もっともこういうのを素直に楽しめないのは私の欠点で、ウェルメイドな娯楽作品として読む分にはよく出来てると思う。何にでもティム・パワーズ並みの完成度を期待するのが間違いなのよね。