20世紀の幽霊たち

20世紀の幽霊たち (小学館文庫)

20世紀の幽霊たち (小学館文庫)

イギリスのマニア向け出版社PS Publishingから出版されるや、ホラー読者の間で評判となり、Bram Stoker Award、British Fantasy Award、International Horror Guild Awardといったホラー/ファンタジー系の作家に与えられる最高の賞を総舐めしてしまったといういわくつきの一冊。World Fantasy Awardだけは惜しくもノミネートに終わってしまったけど。ホラー界に現れた超新星として名前が知られるようになった頃、著者の父親があのスティーヴン・キングであることが明かされ、みんな改めて驚いたという次第。
翻訳が出ているのに気づいた時には店頭から消えてしまっており、ようやく二刷をゲット。噂にたがわぬ粒揃いの傑作短編集でした。これだけ質の高い、しかもはずれのない短編集は記憶にないですね。クライブ・バーカーの『血の本』全6巻の中から出来のいい作品を選んで2巻分にまとめたといった感じ。とはいっても、ホラー専門といったわけではなく、ファンタジーっぽい作品あり、純文学系の作品ありで、最近はやりの奇想短編がお好きな人なら誰にでもオススメできます。驚くばかりの才能というものを是非味わっていただきたい。

ジョー・ヒルの長編第一作『ハートシェイプト・ボックス』は同じく小学館文庫から出ているので、興味のある方はお読みいただくとして、実は来年3月には父親のキングと競作した作品がなぜかオーディオブックとして発売されます。Road Rageと題されたこの作品は、リチャード・マシスンの『激突』の21世紀版といった趣き。バイク・ギャング団に属する親子が砂漠で巨大トラックに追いまわされる話ということは、親子それぞれの視点から二人が書くってことでしょうね。ジョー・ヒルスティーヴン・キングが競作した中篇「Throttle」に加えて、マシスンの原作「The Duel(『激突』の原題)」まで収録されているからお値打ち。『激突』がスティーヴン・スピルバーグによって映画化されたように、本作もすでに映画化権は売れているというから、今後の展開が楽しみです。

あと今年末には、「Gun Powder」という中篇がPS Publishingから出るのだけれど、こちらは1000部限定の豪華版。200部限定のスリップケース入りと、300部限定のカバー付きハードカーバー版は既に売り切れ。500部限定のハードカバー版ならまだ残ってるみたいだから、ご希望の方はこちらからどうぞ。

ちなみにJoe Hillのブログはこちら
http://joehillfiction.com/
映画化された「ポップ・アート」の画像もありますよん。