ちょっと期待はずれ

岸本佐知子編訳『変愛小説集Ⅱ』読了。

前作が素晴らしい出来だったので期待してたんですが、正直言ってちょっと残念。『変愛小説集』に収められていたアリ・スミスの「五月」やA・M・ホームズの「リアルドール」レベルの作品は見当たりません。ダン・ローズの掌篇集はよく出来てると思いましたが、それ以外の作品には「奇想のための奇想」というか、無理やりな感じが目立っていまひとつ乗りきれませんでした。

ある日突然自分の妻が木でできた人形(マネキン)であることに気づく男の話があるのですが、そのなかに「これはフェミニズム的な寓話なんかではなかった。きみは木みたいなんじゃない、本当に木なのだ。」という一節が出てきます。これを裏から見れば、この作品はひとつの比喩(wooden wife/木で出来たような嫁/無表情な嫁)を現実化することで出来上がっていることがわかります。ジャンル小説では、こういうのを「ワンアイデア」といって普通褒められたものではないと思うのですが、文学という範疇にあることで許容されているような気もします。バーセルミなどの作品とどこが違うのかと言われるとそこまで頭が整理されていないのですが、どうしても二番煎じの亜流といった感を拭い去れないのは何故でしょうか。

あ、でもミランダ・ジュライの「妹」は、後半の意外な展開にびっくらこいたので、これはこれでアリです。