環境に悪い『ロリータ』の話

嘘みたいな話ですが、ナボコフの『ロリータ』が序文なしで出版されちゃったそうです。
お読みになった方はご存知でしょうが、『ロリータ』はハンバート・ハンバートという男が獄中手記で書き残した原稿を、ジョン・レイ博士が編集して出版したもの、という体裁を取っています。もちろんジョン・レイ博士による序文を含めてすべてナボコフによる創作ですから、勝手に削除するなどトンデモナイ話。
ところがペンギン社の編集部が何を間違ったのか、出版当時は著名人だったんだろうけれど今では無名の学者による無意味な序文とでも思ったのか、序文なしのままPenguin Modern Classics の一冊として出版してしまったのでした。4月に出版されたこの本のイタすぎる過ちは6月になって書店ブログで指摘され、慌てたペンギン社はすべて廃棄した上で正しい版を刷り直すとしています。
もし序文なし版を買った人がいれば、それはそれで希少価値があるかも知れません。
何にせよ環境によくない話でした。

Lolita (The Penguin Vladimir Nabokov Hardback Collection)

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