ジョン・クロウリーの幻の翻訳『エヂプト』出版なるか

ついについにあの幻の『エヂプト』が出版されそう。『リトル、ビッグ』でカルト的人気を誇るジョン・クロウリーのもう一つの代表作とあって、随分前からファンの間では翻訳が待ち望まれていたものの、色んな不幸が重なって延び延びになっていた作品だ。

原書の出版は1987年。当初、福武書店(現ベネッセホールディングス)が版権を取得していたものの、1992年に福武書店が出版業から撤退してしまった為、あえなくお蔵入り。

その後、早川書房が1995年にスタートした<夢の文学館>叢書の一冊として、予告リストに「『エヂプト』宮脇孝雄・訳」と名前が挙がっていたものの、ついに出版されることなく叢書自体も5冊出たところで立ち消えになってしまう。ちょうどこの頃が翻訳SF冬の時代だった。

そうこうしているうちに、クロウリーはAegyptの続編を書き始める。"Love and Sleep"(1994)、"Daemonomania"(2000)、"Endless Things"(2007)と三冊の続編を書きあげたうえで、Aegyptというタイトルをシリーズ名に昇格。シリーズ第一作(元々の"Aegypt")を加筆修正したうえで、"The Solitudes"というタイトルで再版してしまった。だから正式に言うと現在"Aegypt"というタイトルの書籍は存在しないわけだ。

大森望さんのTwitter情報だと、SFマガジン1月号の執筆者近況で、宮脇孝雄さんが「ジョン・クロウリー『エジプト』、もうじき訳了予定」と書かれているそうだから、来年中には出るんじゃないかな。四部作の完訳は望むべくもないけれど。

ちなみに、<夢の文学館>は以下の通りまさに夢のようなラインナップでした。

アンジェラ・カーター『ワイズ・チルドレン』
エドマンド・ホワイト『螺旋』
ジェフ・ライマン『夢の終わりに…』
コニー・ウィルス『ドゥームズデイ・ブック
クリストファー・プリースト『魔法』