『キリング・フロアー』読了

キリング・フロアー〈上〉 (講談社文庫)

キリング・フロアー〈上〉 (講談社文庫)

キリング・フロアー〈下〉 (講談社文庫)

キリング・フロアー〈下〉 (講談社文庫)

最近はあまりこういうスリラー物は読まないのだけれど、大量注文されるお客さんがあったので、いい機会だと思って読んでみました。

主人公は米軍憲兵隊あがりの放浪者ジャック・リーチャー。長身で逞しくて格闘能力はずば抜けてて頭が切れて女にもててちょっぴりセンチなところもあるという非の打ち所のない男。今時よくもこんなヒーロー像を作れたなと思っていたら、著者のリー・チャイルドはイギリス人だったのね。70年代のネオ・ハードボイルド以降、ハードボイルドの主人公といえば肉体的精神的に何らかのトラウマを抱えていることが常道になってたわけだけど、イギリス人である著者はそういう風潮が気に入らず、いい意味で空想を自由にめぐらせてアメリカの片田舎を舞台にして強い男が自由自在に活躍する骨太の冒険小説を書きあげたわけだ。プロットにアラは目立つし、女性の扱いがあまりに男にとって都合がよく出来すぎてるけど、この何十年かトラウマ小説ばかり読まされてきた読者にとって、この作品はまさに待ち望んでいた作品だったでしょう。

1997年に書かれた本書以降、リー・チャイルドは毎年ジャック・リーチャーを主人公にした作品を発表しつづけており、最新作の"Gone Tommorow"(2009)が13作目。日本では講談社文庫が翻訳を出していましたが、4作で打ち切られてしまっています。