統計って難しい

今日、時事通信発のこんな記事がネットで流れてました。

【ニューヨーク時事】世界各国の政財界リーダーが集まる「ダボス会議」の主催で知られる世界経済フォーラムは27日、社会進出における性別格差の度合いを評価した「男女格差指数」を発表した。格差が最も小さいとされたのはアイスランドで、以下フィンランドノルウェースウェーデンと上位に北欧諸国が並んだ。日本は75位で、前年(98位)からは改善したものの、先進7カ国(G7)中で最下位だった。
 日本の評価を項目別に見ると、「女性国会議員の数」が105位にとどまるなど、政治への参加度について評価が低かった。また、「高等教育への進学率」が 98位と、教育面での不平等が指摘されたほか、経済面でも「賃金格差」が99位、「就業率格差」が83位と低位だった。ただ、「女性幹部の登用」は6位にランクされた。

 
記事には書いてありませんが(それぐらい書いとけよ!)、「男女格差指数」は世界134カ国を対象にしたもの。現在の国連加盟国が192カ国なので、60カ国ぐらいは統計がとれなかったりして対象外になってるわけです。

で、134カ国中75位というのはいくら何でもヒドすぎるんじゃないだろうか。確かに男女の賃金差はあるし、雇用面での差別はあるだろうけど、今の日本ってそんなにヒドイのかな? オイラが男だから鈍感なだけ? それに、「高等教育への進学率」が134カ国中98位ってどういうことよ。

ということで、世界経済フォーラムのサイトにいって公式のリリースを読んでみました。うーん、こういう統計には詳しくないんだけど、どうなのかな、これ。

「男女格差指数」ってのは、経済・教育・健康・政治の4分野について得点をつけて、それを平均する形で算出されてる。でもって、世界の平均値をまとめたのが下の図。

これを見てわかるのは、健康と教育については世界中のほとんどの国(少なくともこの統計に含まれている134カ国については)で、男女平等が達成されてるってことだ。実際には健康部門で96%、教育部門で93%なんだけど、歴史を振り返ってみればこれは驚くべき数字なんじゃなかろうか。

気になる教育部門について調べてみると、識字率初等教育就学率・中等教育就学率・高等教育就学率を元にランクづけされている。日本は三つ目までは男女比100%で一位なのだけれど、女子の高等教育就学率が男子に較べて88%なのでこの部門で98位になってるわけ。88%で98位だよ! 他の国がどうなってるのかと思ったら、高等教育就学率は90カ国で女子の方が多いのだ。トップクラスはカタールバーレーンクウェートなどの中東諸国で、女子の方が2倍から3倍くらい多い。この統計の場合、90カ国までが1位で、99%のキプロスは91位にランク付けされている。ほとんど偏差がないので、わずかな差で順位がまったく変わってしまうわけだ。少なくとも健康部門と教育部門に関しては、順位をどうこう言うのはあまり意味がないんだと思う。もちろん日本の大学教育に男女差の問題がないというわけじゃないよ。四年生大学を出ると女子は就職が不利などという馬鹿な慣習は改めなくちゃいけない。

ところで「健康」についてはもっと問題がある。こちらは教育以上に偏差がなくて、ごくごくわずかな数値の差で順位がつけられている。日本は0.9791で41位なのだけれど、0.9796の1位を取った国が39カ国ある。全体の順位には影響がないとはいえ、どうして日本は一位にならなかったんだろう。

「健康」部門は男女の寿命と出生率の割合を元に算出されている。寿命は女性の方が長いのが当たり前なのだけれど、日本の場合は1.04という平均値を上まわる1.06でこちらは1位。ところが、男女出生率では平均値0.93に対して0.94という数字なのに89位にランク付けされている。何で? そもそも男女出生率が男女格差と何の関係があるんだろう?

統計数字の説明を読んでビックリした。男女出生率の項目は、男子を望む傾向が強い国々で行なわれている"missing women"という現象を焙りだすためにあるのだと書いてある。遺伝子の問題らしいけど、本来の出生率だと女子より男子の方が4〜5%ほど多く生まれることになっている。ところが、女児に限って堕胎するとか、出生届けを出さないとか、殺してしまうとかいうことが起こると、男女出生率が大きく狂ってくるというわけだ(例に出して悪いけど、一人っ子政策が行なわれている中国ではこの問題が深刻で、女/男比が0.91になっている)。なんとこの日本でいまだに「間引き」を行なわれているのか! いったい他の国とどのくらい数値が違うんだろう?……と思って調べてみると、1位の国の数値も日本と同じ0.94なのだ。何度見ても間違いない。男女出生率0.01以下のわずかな違いで順位がつけられているわけで、この89位という数字には一体どんな意味があるんだろうと思ってしまう。

(この項つづく)