ポストモダン小説61選

"61 essential postmodern reads: an annoteated list"
というリストがLos Angels Timesのブログに掲載されていました。作成はCarolyn Kelloggさん。

あぁ……ポストモダン文学なんて言葉、久しぶりに聞いた気がするなぁ。20年前とは隔世の感があります。本当は、おいらこんな小説だけ読んで余生を過ごしたいんだけど……

このリストが面白いのは、各作品の「ポストモダン小説」属性まで掲載されていること。

・作者が登場人物として登場する
・現実とフィクションの境界が曖昧
・自己矛盾するプロット
・偽の歴史を扱っている
・形式との戯れ
・言語との戯れ
・他の文学作品へ過剰な参照
・作品自身が書物であることへのコメント
・1000ページ以上ある
・200ページ以下
・作中に別のフィクション(短編や手紙など)を含む
ポストモダンの草分け

どの作品にどんな属性がついてるかはオリジナルの記事を御覧にいただくとして、邦題リストを挙げておきます。こうしてみると結構翻訳されてるんですよね。ざっとチェックしたつもりですが、なにぶん量が多いので間違ってたら優しくご指摘くださいませ。

キャシー・アッカー "In Memorium to Identity"
ドナルド・アントリム "The Hundred Brothers"
マーガレット・アトウッド『昏き目の暗殺者』
ポール・オースター「ニューヨーク三部作」
ニコルソン・ベイカー『中二階』
J・G・バラード『残虐行為博覧会』
ジョン・バース『やぎ少年ジャイルズ』
ドナルド・バーセルミ"60 Stories"
ジョン・バージャー『G』
トマス・ベルンハルト『破滅者―グレン・グールドを見つめて』
ロベルト・ボラーニョ "2666"
ホルヘ・ルイス・ボルヘス『伝奇集』
ウィリアム・S・バロウズ裸のランチ
ロバート・バートン『憂鬱の解剖』
イタロ・カルヴィーノ『冬の夜ひとりの旅人が』
フリオ・コルタサル『石蹴り遊び』
ロバート・クーヴァー『ユニヴァーサル野球協会』
Stanley Crawford, "Log of the S.S.Mrs.Unguentine"
マーク・Z・ダニエレブスキー『紙葉の家』
ドン・デリーロ "Great Jones Street"
フィリップ・K・ディック『高い城の男』
E・L・ドクトロウ "City of God"
Geoff Dyer, "Out of Sheer Rage: Wrestling With D.H.Lawrence"
ウンベルト・エーコ"The Mysterious Flame of Queen Loana"
デイヴ・エガーズ『驚くべき天才の胸もはりさけんばかりの奮闘記』
ティーヴ・エリクソン『黒い時計の旅』
Percival Everett, "I Am Not Sidney Poitier"
ウィリアム・フォークナー『アブサロム!アブサロム!』
ジョナサン・サフラン・フォア『エブリシング・イズ・イルミネイテッド』
ウィリアム・ギャディス『JR』
ウィリアム・ギャス "The Tunnel"
ジョン・ホークス『罠―ライム・トゥイッグ』
ナサニエル・ホーソーン『緋文字』
Aleksandar Hemon, "The Lazarus Project"
マイケル・ハー『ディスパッチズ―ヴェトナム特電』
シャーリイ・ジャクスン "Skin"
フランツ・カフカ『変身』
ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』
ジョナサン・レサム『マザーレス・ブルックリン』
ベン・マーカス『沈黙主義の女たち』
David Markson, "Wittgenstein's Mistress"
Tom McCarthy, "Remainder"
Joseph McElroy, "Women and Men"
スティーヴン・ミルハウザーエドウィン・マルハウス』
村上春樹ねじまき鳥クロニクル
ウラジーミル・ナボコフ『青白い炎』
フラン・オブライエン『スイム・トゥー・バーズにて』
ティム・オブライエン『本当の戦争の話をしよう』
ハービー・ピーカーアメリカン・スプレンダー
トマス・ピンチョン重力の虹
フィリップ・ロス背信の日々』
W・G・ゼーバルト土星の環―イギリス行脚』
ウィリアム・シェイクスピアハムレット
Gilbert Sorrentino, "Mulligan Stew"
Christopher Sorrentino, "Trance"
アート・スピーゲルマン『マウス』『マウスⅡ』
ローレンス・スターン『紳士トリストラム・シャンディの生涯と意見』
スカーレット・トマス "PopCo"
カート・ヴォネガットスローターハウス5
デヴィッド・フォスター・ウォレス "Infinite Jest"
Colson Whitehead, "John Henry Days"


Stanley Crawford, Geoff Dyer, Christopher Sorrentino, Colson Whitehead の4人はまったく知りませんでした。さっそくチェックしてみます。

Percival Everett の"I Am Not Sidney Poitier"は、実はつい先日購入したばかりです。このタイトル『僕はシドニー・ポワチエじゃない』って意味だと思われるでしょうが、違うんです。主人公の名前がNot Sidney Poitierなんです(笑)。これだけで買うしかないわけですが、文化アイコンとしてのシドニー・ポワチエの意味を問い直すという企みがあるようで、冒頭読んだだけでも爆笑でした。暑さに負けずに無事読めたら、また御報告します。