『シャーロック・ホームズの科学捜査を読む ヴィクトリア時代の法科学百科』

シャーロック・ホームズの科学捜査を読む

シャーロック・ホームズの科学捜査を読む

原題はズバリ"The Science of Sherlock Homes"で、訳者も有名なシャーロキアンの人だけど、ホームズの愛読者というよりは、むしろ19世紀の科学史に興味のある人に向いてるんじゃないかな。つまり私のことなんだけど(笑)。コナン・ドイルの小説に登場する科学捜査を導入として、検死解剖、毒物の検出法、筆跡鑑定、指紋による個人の特定法、弾道学、血液反応、といった法医学の技術が確率されていく過程を具体的な事件を通して描いていて興味が尽きません。一気に読んじゃいました。

同趣向の構成を取りながらも、『数学で犯罪を解決する』の方は現代数学が対象。アメリカの人気ドラマに「NUMB3RS:天才数学者の事件ファイル」という作品があって、FBI捜査官である兄の調査を、天才数学者である弟が現代数学の理論を使って助けるという内容。日本でも理系の主人公が登場する『ガリレオ』が流行ってたりするけど、こちらは遥かに高度な内容。統計学データマイニングベイズ推論、変化点検出、暗号理論、ゲーム理論、確率論といった数学概念を軸にストーリーが組み立てられている。
本書は「NUMB3RS」の解説本と言いながらもドラマ自体はほんの導入に過ぎず、作品中で使われている数学理論をより深くわかりやすく解説する内容。正直、文系の私には難しすぎる部分もあるけど、モヤモヤの向こうにうっすらと輪郭がつかめるぐらいにはわかったような気になるね。訳者は山形浩生さん。昨年の4月に出版されてたのに、星雲賞ノンフィクション部門の候補作として名前が挙がるまで気付きませんでした。反省。

数学で犯罪を解決する

数学で犯罪を解決する