事実は小説より奇なり……スティーグ・ラーソンの場合

早川書房が昨年大々的に売り出したスティーグ・ラーソンの『ミレニアム』三部作は、スウェーデン人の三人に一人が読み、全世界で1200万部を売り上げた大ベストセラーなのだけれど、著者であるスティーグ・ラーソンは発売前の2004年に心臓発作で亡くなっている。50歳の若さで、遺書も残さずに……。

ということで案の定というか、10万ポンド(約15億円)とも言われる巨額の印税をめぐる確執が起こっている。

一方は、本を書くためのリサーチにも協力した30年越しの恋人。
他方は、遥か昔に縁を切っていた父親と兄弟。

この二者が、ラーソンの「金と、知的財産権と、二人が暮らしていたアパートの半分」の取り分をめぐって争っているわけだ。

恋人のガブリエルソンさんは、売れないジャーナリストだったラーソンを長い間支えてきた「糟糠の妻」。ただし正式に入籍していたわけではないので、現行の法律上はすべての財産権が家族側に移ってしまう。ある程度の金額を提示して和解すればいいんじゃないかと思うんだけど、いやいやそんな甘いもんじゃなかった。

今のところ、家族の側からガブリエルソンさんに提示されたのは、「アパートの半分をやるから、ラーソンの使っていたパソコンを渡せ」というもの。ベストセラーとなった三部作の続編未完成原稿と、メモがいくつか残されているらしいんだけど、ガブリエルソンさんはもちろん拒絶している。