最近読んだ本とか

最近読んだ本の感想など、思いつくままに。


『バートン版アラビアンナイト物語 千夜一夜物語拾遺』
知ってる人はみんな知ってるんだけど、千夜一夜物語には「アラジンと不思議なランプ」と「アリ・ババと四十人の盗賊」という、いかにもアラビアンナイトな物語は含まれていない。これらの物語は、シェヘラザードの語りには含まれず、拾遺という形でバートンによって紹介されたものが有名になったもの。金色装丁の角川文庫版を古本屋で見つけたので、思わず購入してしまいました。改めて読んでみて驚いたんだけど、「アラジンと不思議なランプ」っていうのは中国が舞台なのね。といっても風俗は完全にアラブ圏そのままで、皇帝すらアッラーの神の信奉者なんだけど。悪い魔法使いは当時の西の果てモロッコというわけで、アラビアを中心として幻想の東の果てと西の果てとを結びつける物語になっているのが面白いところ。

嵐が丘』 エミリー・ブロンテ
古典作品ってのは読まず嫌いを克服して実際に読んでみると大抵予想外に面白いもんなんだけれど、こればっかりは駄目でしたね。なんでこんなに評価されてるのかさっぱり理解できない。とにかく登場人物が嫌な奴ばっかりで、うんざりしちゃう。高慢な奴、卑劣な奴、愚かな奴、いくじなしな奴ばっかり。しかも、キャラの書き分けが下手だから、二世代に渡る因縁物語の登場人物たちが殆ど同じパターンの焼き直しだったりする。モームが何を思って「二十世紀の十大小説」に選んだのか、逆に確かめてみたい気がしました(赤井英和的に)。

『金剛石のレンズ』 フィッツ・ジェイムズ・オブライエン著
ソノラマSF文庫で読んでいるのだけれど、未収録作品も含まれているので購入したもの。19世紀半ばのアメリカでごく短期間だけ活躍した奇跡のような天才作家の作品集です。ディティールをすっかり忘れていた表題作は、改めて読むととんでもなく傑作ですね。科学と文学との完璧な結婚。南北戦争で亡くなることがなければ、ポーに匹敵する大作家になっていたんじゃないかと想像してしまいます。