The Year's Best Fantasy and Horror 2008

エレン・ダトロウとケリー・リンク&ギャヴィン・J・グラント夫妻が編集する年間ベスト"The Year's Best Fantasy and Horror 2008"をゲットしました。毎年、冒頭に載っている昨年の総括をチェックするのが楽しみで買っております。特にケリー・リンク夫妻のお気に入りが要チェック。

昨年は、Shaun Tan の文字のないグラフィックノベル"The Arrival"と、ジェイムズ・ティプトリーJr.ことアリス・B・シェルドン博士の伝記"James Tiptree, Jr: The Double Life of Alice B.Sheldon"が二人のイチオシ。他に、"Jonathan Strange & Mr.Norrell"で有名なSusanna Clarkeの初短編集"The Ladies of Grace Adieu and Other Stories"、Shelly Jacksonの"Half Life"、こちらは翻訳もでたオーストラリアの奇才マーゴ・ラナガンの『ブラック・ジュース』、ジェフリー・フォードの短編集"The Empire of Icecream"などが挙げられておりました。

さて今年はというと、短編集とヤングアダルト部門に秀作が多かったようです。

ヤングアダルト部門ではアーシュラ・K・ル=グインの「西のはての年代記」の三作目『パワー』、Ysabeau Wilce のデビュー作"Flora Segunda"、Elizabeth Knoxの"Dreamquake"、China Mieville初のヤングアドルト作品"Un Lun Dun"などが挙げられていますが、この分野は私は敬遠してるので正直よくわかりません。でもElizabeth Knoxのシリーズは特にケリー・リンクのお気に入りらしいので読んでみようかしら。

ヤングアダルト以外の長編では、Guy Gavriel Kayの"Ysabel"(本年度のWorld Fantasy Award長編賞受賞)、ナオミ・ノヴィクの「テメレア戦記」第4巻"Empire of Ivory"、Daniel Abrahamの"Long Prince Quartet"シリーズ第二巻"A Betrayal in Winter"など。Abrahamのシリーズは権謀術数渦巻く群像劇で、マーティンの「炎と氷の歌」のファンならきっと気に入るだろうとか。チェックせねば。

アンソロジー部門では、ガードナー・ドゾワとジャック・ダン編集による"Wizards: Magical Tales from the Masters of Modern Fantasy"が、現代ファンタジー作家総出演といった面持ちで壮観。ニール・ゲイマンの未発表長編の抜粋から始まって、オーソン・スコット・カード、ジェイン・ヨーレン、ジーン・ウルフ、パトリシア・A・マキリップ、タニス・リー、エリザベス・ハンド、ガース・ニクス、ピーター・S・ビーグル、等々、総勢18名。
John Klima編集による"Logorrhea: Good Words Make Good Stories"は変わった趣向のアンソロジーアメリカで盛んなスペリング・コンテストで出た難しい単語をお題として、作家に執筆依頼してます。例えばMarly Youmans に出された課題は"smaragdine"、Jeff Vandermeerには"appoggiatura"、Theodora Gossには"dulcimer"。いったい何語かとお思いでしょうが、英語辞典に載っているれっきとした英単語なのです。ちなみにTheodora Gossはこのアンソロジーのために書いた短編"で、World Fantasy Awardの短編賞を受賞しています。