『エルサレム・ポーカー』 版背表紙の紹介文

1921年12月末日、三人の謎めいた男たちが運命のポーカーの席についた。中東で媚薬効果のあるミイラ粉配給権を握っている蒼い目のアフリカ人カイロ・マーター。元アイルランド愛国者にして武器密輸業者、今では男根を模したキリスト教徒向けの土産物で一財産作ったオサリバン・ビアー。熱心なシオニストで干し魚の先物取引に賭けるムンク・ゾンディ。舞台となるのはエルサレムのとある古物商(実は三〇〇〇歳の遍歴の騎士)の裏部屋。やがて「グレート・エルサレム・ポーカー」と呼ばれることとなるこのゲームは十二年も続き、エルサレムそのものの支配権をめぐる賭けへと拡大していく。世界中から押し寄せた何千人もの賭事師がこのゲームに参加し、聖都を手にしようとして莫大な富を失った。しかし最後にテーブルに残ったのは三人だけ。最初にゲームを始めた三人だった。今まさに最後の手札が配られようとしたその時、もう一人の競争者がゲームに加わる。ヌバール・ワレンスタイン。世界最大の石油シンジケートの後継者にして、国際スパイ組織の非情なるボス、そして不死を追い求める狂信的な錬金術師でもある男。各々の運命、そして人類そのものの運命、すべてはカードの巡りあわせにかかっていた……。