アメリカの大手書店チェーン Barnes & Noble に売却話

http://www.asahi.com/digital/av/TKY201008040095.html
http://journal.mycom.co.jp/news/2010/08/04/019/

Barnes & Noble のプレスリリースがこちら。
http://www.barnesandnobleinc.com/press_releases/2010_aug_3_bks_strategic_alternatives1.html
出版業界紙Publisher's Weeklyの記事がこちら
http://www.publishersweekly.com/pw/by-topic/industry-news/bookselling/article/44049-b-n-considering-sale-riggio-may-make-bid.html

驚きました。アメリカの大手書店チェーン「Barnes & Noble」が会社の売却を検討しているというニュースです。

日本と違ってアメリカでは「Borders」と「Barnes & Noble」という二つの書店グループの寡占状態が続いています。両社ともアメリカ全土に700店以上の書店を抱える巨大チェーン店です。本の値引き販売が自由にできるアメリカでは、上記の二書店とAmazonをはじめとするネット書店とが熾烈な価格競争を繰り広げており、それ以外の独立系書店が次々と店をたたんでいるのが現状です。

こういう状況ですので、「Barnes & Noble」が売却されるというのは、日本で例えば紀伊國屋書店(63店舗)やジュンク堂書店(38店舗)が売却されるということとは規模が違います。むしろ、日販とトーハンという二大寡占取次の一方が売却されるというのに近いのではないでしょうか。

今回の売却話は電子書籍戦略を視野に入れた資本強化が目的であって、全米にある700店の書店がなくなるといった話ではなさそうです。ただ、どこの資本家グループが買うにせよ合理化の下に不採算店舗を閉鎖といった流れに向かうことは避けられないんじゃないかと心配しています。

<追記>
なんだか面白いことになってるみたいです。
一部の報道やらTwitterによる伝聞のなかで、B&Nが書店経営から撤退するとか、店舗を閉鎖するだとかいう話になってるようですが、それはいくら何でも言い過ぎでしょう。こちらのブログの方(http://oharakay.com/archives/2121)が誤報に怒りまくっておられます。
私は株やら企業買収のことはよく分からないので、今回の件が「売却」とか「身売り」に相当するのか判断できませんが、公式のプレスリリースなどを読む限りでは、持株比率が大きく変わる規模の株式の売却もしくは外部資本の注入が行われる可能性が示唆されているように思われます。
とにかく問題はB&Nの株価が低すぎること。6月に投資家を集めて開かれた会議で今後の経営戦略について説明したものの(電子書籍分野を成長させる。リアル書店での本の販売は会社の大事な資産。近い将来に大規模な店舗閉鎖は考えていない、等々)、株価を向上させる役には立たなかったようです。会議では電子書籍部門への投資が過剰なのではという危惧や、リアル書店(英語ではbricks-and-mortar storesと言います。)がいつまでもつのかといった疑問が示されたとのこと。これはつまり現経営陣の経営戦略に対して疑義が突きつけられたという訳で、株価回復のためには経営陣の交代か外部役員の参加が必要と判断されても仕方がないということかも知れません。まぁ、素人判断だとそういう感じです。
現在は外部の専門家らに今後取りうる経営オプションを評価してもらっている最中ということなので、「売却」はあくまで一つの選択肢に過ぎません。以前から噂のあったように市場の株を買いあげて上場廃止するという手もあるでしょうし、優良不動産・店舗を売却して現金化するという手もあるでしょう。とにかく今は見守るしかありませんね。