Iain Pears の新刊 "Stone's Fall" 間もなく発売

Stone's Fall: A Novel

Stone's Fall: A Novel

歴史ミステリの傑作"An Instance of Fingerpost"がなかなか翻訳されないIain Pearsの新刊が出版されます。

タイトルは"Stone's Fall"。

第一部の舞台は1909年のロンドン。窓から転落死した大富豪ジョン・ストーン男爵の遺児を探すべく雇われたジャーナリストは、20世紀型資本家の先駆けであった男爵の正体が武器商人であることに気づく。

第二部の舞台は1890年のパリ。金融バブルに沸くこの街で、若き銀行家ヘンリー・コルトは、信用はそれ自体が資産であり、商品と同じようにマーケットで取引可能だということに気づく。金もうけの天才ジョン・ストーンと、後にその妻となる謎めいた美女エリザベスも登場し、現在の金融危機の原風景が描かれる。

第三部の舞台は1867年のヴェニス。若きジョン・ストーンは、コルトの父親である建築家と、魚雷を発明した技師と出会い、後の富の礎を築くのだが……。

という具合。通常の歴史小説と違って、時代がどんどん遡っていくのが特徴。イアン・マキューアンの『贖罪』やカズオ・イシグロの『日の名残り』のテイストといえば、読まれた方にはおわかりかと。

男爵の死の真相や、遺書に記された遺児の正体をめぐる精緻なサスペンスであると同時に、金融資本主義の誕生をめぐるビジネス小説・金融小説の側面もあり、さらには第一次大戦に至る諜報合戦、武器開発競争など、興味深いテーマを幾つも詰めこんだ作品のようです。

800ページという長さにはビビリますが、ぜひ読んでみたいですね。5月5日に発売開始です。