世界のユリシーズ

下の記事にも出てきたジョシュア・コーエン(Joshua Cohen)という作家が、800ページを超える"Witz"という作品をDalkey Archiveから出版したばかりなんですが、こういう大部の(かつ難解な)小説を書くとジョイスの『ユリシーズ』と比較されるのがお決まり…

もっと"20 Under 40"

こないだこのブログで紹介したThe New Yorkerの"20 Under 40"を受けて、他の媒体でも早速同様の企画が展開されています。文芸ブログの老舗 The Millions の選んだ"20 More Under 40"はこちら。 http://www.themillions.com/2010/06/20-more-under-40.html お…

環境に悪い『ロリータ』の話

嘘みたいな話ですが、ナボコフの『ロリータ』が序文なしで出版されちゃったそうです。 お読みになった方はご存知でしょうが、『ロリータ』はハンバート・ハンバートという男が獄中手記で書き残した原稿を、ジョン・レイ博士が編集して出版したもの、という体…

映画版"Never Let Me Go" 予告編

もうすでに一部で話題になっていますが、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで(Never Let Me Go)』映画版のトレイラーが公開されています。 主演は人気絶頂のキーナ・ナイトレイ。校長役にシャーロット・ランプリングが出演しています。*うーん、ブログ…

今年のオレンジ賞はBarbala Kingsolverの"The Lacuna"

女性作家の作品に与えられるイギリスの文学賞 The Orange Prize for Fiction が発表になりました。ブッカー賞に次いで名誉ある賞です。今年の受賞作は、Barbala Kingsolverの"The Lacuna"。ヒラリー・マンテルのブッカー受賞作"Wolf Hall"を抑えての受賞です…

イギリスのダートマスではカラスの代わりにカモメがゴミをつつきに来るらしい

Our Tragic Universe作者: Scarlett Thomas出版社/メーカー: Canongate Books Ltd発売日: 2010/05/06メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (1件) を見る"Our Tragic Universe"はディティールは面白いんだけど、前作"The End of Mr.Y"に比べればプロ…

The New Yorkerが選ぶ"20 Under 40" (続編)

http://www.newyorker.com/magazine/toc/2010/06/14/toc_20100607The New Yorker のフィクション特集はかなり気合が入ってるみたい。 「40歳以下の20人」をただ選んだだけじゃなくて、雑誌を挙げてプッシュしていく模様。選ばれた20人のうち、8人の作…

The New Yorkerが選ぶ"20 Under 40"

ニューヨーカー誌が選ぶ"20 Under 40"(40歳以下の将来が期待される作家20人)が、まもなく発売される文学特集号で発表されるそうです。とはいえ、そのリストはネットで公開されてまして、顔ぶれと年齢は以下の通り。Chimamanda Ngozi Adichie, 32 Chris…

デザイン変更中

Twitterのヴィジェットを設置するついでに、このブログのデザインも変えてみることにしました。前のはよくわからないオンラインゲームのキャラクターがテーマでしたが、なにげに可愛かったので使ってただけです。とりあえず落ち着く色合いに変更したんですが…

『チャタレイ夫人の恋人』に苦戦中

今までD・H・ロレンスの小説を一篇たりとも読んだことがないので、ジェフ・ダイヤーの"Out of Sheer Rage: In the Shadow of D.H.Lawrence"を読む前に、『チャタレイ夫人の恋人』を読むことにしました。伊藤整訳で。3分の2ぐらいまで来ましたが、正直キ…

マーティン・ガードナー氏、死去

著名な数学者であるマーティン・ガードナーさん(1914-2010)がお亡くなりになりました。サイエンティフィック・アメリカン誌で25年に渡って連載していた数学コラム『数学ゲーム(Mathematical Games)』が何といっても有名で、ここで掲載されたパズルをきっか…

Viz Mediaが大量解雇

英訳マンガ出版を代表するViz Mediaが、社員の40%にあたる60人の解雇をしたという衝撃的なニュース。Vizは小学館と集英社が共同で始めた会社で、『Naruto』『Bleach』『One Piece』など強力なラインナップを抱えており、業界では圧倒的なシェアを占めて…

「ヤコブ・ダズートの千秋」のために

The Thousand Autumns of Jacob de Zoet作者: David Mitchell出版社/メーカー: Sceptre発売日: 2010/05/13メディア: ペーパーバック購入: 1人 クリック: 19回この商品を含むブログ (6件) を見る"The Thousand Autumns of Jacob de Zoet"の主人公は1799年の7…

2009ネビュラー賞はバチガルピに

2009 Nebula Awards が発表になりました。今年の長編賞は、パオロ・バチガルピ、チャイナ・ミエヴィル、シェリー・プリーストらの三作がヒューゴー賞とダブッているということで注目されていたのですが、まずはPaolo Bacigalupiの"The Windup Girl"が見事ネ…

バチガルピの"The Windup Girl"読書中

近未来のタイを舞台に、タイ語、中国語、日本語、マレー語などが飛び交い、なかなかの手ごわさですが、緻密な世界設定に加えて、登場人物たちがみな陰影に富んだ性格の持ち主で魅力的。申し訳ないけど、Boneshakerよりは小説として一枚も二枚も上手(うわて…

2010 EdgarAllan Poe Awards 長編賞は、John Hart の"The Last Child"

4月29日にエドガー賞の発表がありました。実は前日のウォールストリートジャーナル紙に、エドガー賞を複数回受賞する作家が殆どいない。「the first Edgar is often the last」だという記事が出たところだったんですが、この批判をくつがえすかのように日…

Arthur C Clarke Award はミエヴィルが受賞

The City & The City作者: China Mieville出版社/メーカー: Pan Books発売日: 2010/01/01メディア: ペーパーバック購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (2件) を見るArthur C Clarke Award を、China Miévilleの"The City an d the City"が受賞しま…

Fugue State 読書中

Evensonの"Fugue State"をポツポツと読書中。確かに尋常ではない短編集。普通の意味でのオチがない話も多い。にも関わらず異様な迫力がある。登場人物の多くは物事に感じすぎたり、強迫観念に取り付かれていたり、現実と妄想の境界がわからなくなった人ばか…

Brian Evensonがすごいらしい

Fugue State作者: Brian Evenson,Zak Sally出版社/メーカー: Coffee House Pr発売日: 2009/07/01メディア: ペーパーバック購入: 2人 クリック: 5回この商品を含むブログ (2件) を見るあーっ、TwitterでBrian Evensonという作家のことが話題にのぼってると思…

デイヴィッド・ミッチェルの新刊が来月発売に

David Mitchellが次回作の取材のために日本に滞在してたことは聞いてましたが、ようやくその作品が発売になります。タイトルは"The Thousand Autumn of Jacob de Zoet"。18世紀末の日本にやってきたオランダ東インド会社の職員ヤコブを主人公とするエピッ…

これから読む本 --- Cherie Priestの"Boneshaker"

Boneshaker (Sci Fi Essential Books)作者: Cherie Priest出版社/メーカー: Tor Books発売日: 2009/09/10メディア: ペーパーバック クリック: 20回この商品を含むブログ (3件) を見る『1Q84』も無事読み終わったので、そろそろ英語の小説に復帰。ミエヴ…

スカーレット・トマスの新作"Our Tragic Universe"

Our Tragic Universe作者: Scarlett Thomas出版社/メーカー: Canongate Books Ltd発売日: 2010/05/20メディア: ハードカバーこの商品を含むブログ (1件) を見るポストモダンついでに、一昨年翻訳された『Y氏の終わり』(書評はココとか)が評判になったスカ…

Geoff Dyerが気になる

Out of Sheer Rage: In the Shadow of D. H. Lawrence作者: Geoff Dyer出版社/メーカー: Abacus Software発売日: 1998/08/01メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (1件) を見るこないだからGeoff Dyerという作家のことが気になってて、何冊か仕入れ…

ジョー・ヒル情報

せっかくなのでジョー・ヒル情報もいっときましょうか。スティーヴン・キングの次男ってことはもういいですよね。御本人のブログがこちら。 http://joehillfiction.com/"Horns"のプロモーションでアメリカ・イギリス・カナダを忙しくまわったばかりの模様。T…

デビルマン誕生、というかジョー・ヒルの新作『Horns』のこと

Horns作者: Joe Hill出版社/メーカー: Gollancz発売日: 2010/09/16メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (1件) を見るジョー・ヒルが出たついでに、彼の新刊『Horns』も御紹介。滅多にしないことですがハードカバーで買って読んじゃいました。主人…

『ヒー・イズ・レジェンド』読了

ヒー・イズ・レジェンド (小学館文庫)作者: ジョー・ヒル,スティーヴン・キング,F・ポール・ウィルソン,クリストファー・コンロン,風間賢二,白石朗出版社/メーカー: 小学館発売日: 2010/04/06メディア: 文庫 クリック: 4回この商品を含むブログ (12件) を見…

バチガルピ、バチガルピ

その筋では話題のバチガルピですが、"The Windup Girl"のペーパーバック版がようやく5月15日に発売になります。自分用と店用にさっそく予約注文。Night Shade Books なんてジャンル系独立系出版社の本を置いてる本屋なんて、うちの店ぐらいかも知れない(…

ちぇっ

『1Q84』の第3巻は明日16日が正式の発売日なんだけど、1・2巻の時は三宮のジュンク堂では前日から販売してたもんで、さっき張り切って買いにいった。だけど、今回は販売協定があって16日の午前0時まで販売しちゃ駄目なんだそうだ。まぁ、理解は…

本好きならツイッターでフォローしておくべき50人の人々。

洋書に興味があってツイッターをしている人なら必見の記事かも。50 Best Book People To Follow On Twitter http://www.huffingtonpost.com/2010/04/09/50-best-book-people-to-fo_n_529295.htmlニール・ゲイマン、マーガレット・アトウッド、J・K・ローリ…

滅び行く書店文化へのレクイエム

滅びゆく書店文化を象徴しているようで思わず撮影してしまいました。神戸市中央区湊町一丁目あたり。倒産した本屋のあとに借り手が現われず、そのまま廃墟化した建物が日本中にあるだろうから、そういうのを写真に撮って本にしたら面白いんじゃないかとフト…